日本の医療技術レベルは、欧米諸国に決して引けを取りません。むしろ、特定の分野では世界をリードする水準にあるといえるでしょう。学会で日本人が発表する論文や最先端治療技術が、世界の話題を集めることも珍しくなくなりました。病院システムに先進性が欠けるという指摘が見られますが、これは国民皆保険による全国一律制度と表裏一体にあるといえます。つまり、諸外国のように、金持ち専用の病院と庶民の病院を分けられないことに起因しているからだといえます。
日本の場合、街の個人の診療所でも大学の附属病院のような大型病院でも、基本的に費用負担が変わらないという特徴があります。風邪を引いた程度の人が紹介状や予約なしで、いきなり大学病院に来るという国はあまり存在しません。これが、日本のシステムを非効率なものにしていると指摘する専門家は少なくありません。諸外国のように、最初は近所の診療所に行き、必要に応じて大きな病院を紹介してもらうという方式に統一したほうが、はるかに効率的です。その上、なにより国が支出するコストの抑制につながるでしょう。
もう一つ大きな特徴として、医師や看護師を含む日本の医療従事者の患者に対する対応や姿勢の良さが挙げられます。これは、病院だけではなく日本人全体に共通した印象かもしれません。最近増加している海外の富裕層の医療旅行客が口をそろえて指摘するのが、この点です。患者に接する際の医師や看護師の丁寧な対応と真摯な姿勢に驚くといいます。そして、このことが、特に途上国の富裕層の間の口コミでじわじわと拡がりつつあります。今後、治療や検査を目的に日本を訪れる外国人の増加が見込まれそうです。